航空会社にとっては、飛びたい曜日・時刻に自由に運航できるのが理想ですが、現実には、成田、羽田や関西空港など世界の混雑する空港では、空港処理能力により決定される発着回数や航空機騒音等の環境問題による制限が存在するため、非常に困難な状況となっています。従って、航空会社の要望がこの制限を超過しないよう事前に調整し、航空会社が円滑に運航を行うための発着調整業務が必要なのです。
国際線を運航する世界中の民間航空会社約290社が加盟するIATA(国際航空運送協会)は、ACI(国際空港評議会)及びWWACG(世界規模のコーディネーターの協議会)と連携し、国際定期便の運航を確実・安定的なものとするため、時刻表の元となる就航空港における航空機の運航曜日、出発・到着の時刻(これを「スロット」と呼んでいます。)を調整する際の世界共通のガイドラインを定めています。
発着調整は、航空機の運航計画を作成する航空会社のスケジュール作成者(スケジューラー)と、乗入空港サイドのスロットの管理などを担当する当事務局のような調整役(コーディネーター)との間で、世界共通のガイドラインに準拠し、また、各空港独自の状況を考慮したいわゆるローカルガイドラインに基づき、中立性、公平性、透明性を常に念頭に置き行われます。
国際空港の発着調整業務に従事するスケジューラー、コーディネーター等が準拠すべき方式、手順が記載されています。この中には、下記のような項目についての記載があります。
WASGでは、航空会社の需要と各空港の能力により派生する混雑度に応じて、3段階のレベルに分類しています。一番混雑度の高い空港がレベル3空港で発着調整が必要な空港となっています。次に混雑度の高い空港がレベル2空港で、円滑なスケジュール設定のためのアドバイスが必要とされており、レベル1空港は混雑が無く調整の必要のない空港と定義されています。日本においては、成田、羽田、福岡、関西空港がレベル3空港、新千歳、中部空港がレベル2空港としてIATAにより指定されています。
レベル3空港: | 52ヶ国2地域 198空港 | 成田・羽田・福岡・関西 |
レベル2空港: | 48ヶ国2地域 152空港 | 新千歳・中部 |
レベル1空港: | 非調整対象空港 |
WASGでは、発着調整業務の基本理念(中立性、公平性、透明性)、原理・原則としての発着調整に当たっての優先順位等、調整過程として発着調整業務全般に渡る時系列的な調整手順、が規定されています。
発着調整業務においては、世界中のスケジューラー、コーディネーターがインターネット等の通信回線を利用して、フライトに係わるデーターを交換しながら調整を行います。そのため、世界共通で使用できる通信メッセージの種類の定義化、空港コード、航空会社コード、機種コード等の様式統一化が必要になります。それら、通信手段、データー様式等の標準化されたものが、このマニュアルに記載されています。発着調整に係わる部分は、第6章に記載されており、下記のような項目についての記述があります。