スロットとは、レベル3空港(最も混雑している空港)においてコーディネーターにより割り当てられる、特定の曜日における到着時間、出発時間のことです。なお、到着時間、出発時間とは、滑走路に着陸する時間、滑走路から離陸する時間ではなく、ターミナルビルから離れる時間、ターミナルビルに到着する時間の事です。
空港の混雑は、空港の施設容量(供給)と航空需要とのバランスが崩れた時に発生します。拡大する航空需要は、空港の各施設に対して常に拡張するよう働きかけてきますが、空港の施設拡張には大きな資金需要と長期の整備期間がかかります。この間、需要と供給のアンバランスが生じる事から、1年の内の特定のシーズン、週の特定日、1日の特定時間といった所で混雑が発生するのです。
最善の回避方策は、空港の容量(供給)を拡大する事でありますが、それには多額の費用と長期の整備期間が必要となり、そんなに簡単に達成できるものではありません。空港の容量拡大ができない場合には、空港の各施設において混雑が発生することになります。それを回避する目的で、政府、空港当局、管制(ATC)機関、航空会社はコーディネーターと協力しながら、スロット割当を適正に行う事により混雑を解消することができます。
IATAは、長期間に渡り空港の混雑を解消する目的で、航空会社のスケジューラー、コーディネーターが従うべきグローバルなガイドラインを作成してきました。コーディネーターは、このグローバルなガイドライン及び各空港に設定された規制値に従いながら、航空会社の需要と施設供給能力のバランスを取りながら調整を行い混雑を回避するのです。
空港には、施設上の能力、騒音上の制約、管制上の能力を考慮し、航空機の安全運航、定時運航等を確保する観点から、下記のようなさまざまな規制が設定されています。
国内外の航空会社のスケジューラーと、コーディネーター、空港(空港会社)と空港事務所(航空局)との業務関連を簡単に図示すると、下記のようなものとなります。
国内外のスケジューラーから、インターネット等の通信回線を経由し、航空会社の要望する便毎の運航曜日、到着時間、出発時間、 使用航空機種等の情報がコーディネーターに対し送付されてきます。これら各航空会社から要望されるデーターを集計すると、 混雑空港においては、ある特定の曜日、ある特定の時間帯に集中し、空港に設定されている空港処理容量、空港の管制処理容量等の制限値を超えてしまいます。
コーディネーターは、空港における混雑を緩和するために、国内外のスケジューラーと緊密な連絡を取りつつ各曜日、各時間帯に関して、 この制限値内に収まるようにスケジュールの調整を行います。具体的には、各航空会社と個別に便名毎に曜日の変更、時間帯の変更について調整しますが、 各航空会社にとって不公平が起こらないようにIATA/ACI/WWACGが共同で定めた世界共通のガイドラインに従って実施されます。
国際線発着調整事務局(JSC)は、レベル3空港である成田国際空港(NRT)、東京国際空港(羽田)(HND)、福岡空港(FUK)及び関西国際空港(KIX)におけるスロット割当業務を行っています。また、レベル2空港である新千歳空港(CTS)におけるスケジュール調整業務を行っています。
この他、IATAでレベル2空港として登録されている中部国際空港(NGO)については、航空局の空港事務所がスケジュール調整業務を行っています。
(注)関西国際空港については、S21まではレベル2空港としてスケジュール調整業務を実施。